佐久間健の執筆活動



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新聞寄稿(埼玉新聞 2003年9月17日)

埼玉新聞「標点」

企業危機 『日常の管理を経営の中心に』

企業危機は不祥事だけではなく、さまざまな要因によって起こる。ひとつは経営そのものが起こす危機である。経営力の不足や判断ミスが企業を危機に追い込んでいく。

第二の危機は企業倫理や法令違反が引き起こす危機、いわゆる不祥事で、これは、消費者(国民)、従業員、株主、取引先などに多大な損害を与え、国の経済を低迷させる。行き過ぎた利益追求も問題を起こす。エンロン事件のように不正の原因をつくることになる。この二つの企業危機は、経営者のリーダーシップが強い企業では起こりにくい。しかし世間的に今最高に見える企業の経営者は、その時点で最高の危機をはらんでいることも多い。問題点を時の勢いで見落とすことや慢心がもたらす危機に経営者自身が気づかないことである。ちょっとしたつまずきで問題が噴出し、企業危機を招く。

第三の危機がBSE、テロ、O157、SARSなどの社会的懸念事項である。企業努力と関係のないところで起こる社会的な問題が企業にダメージを与える。この問題は非常に深刻で、一企業だけで対応できるものではなく、政府の指導、国際的な連携のもとに対処しなければならないことも多い。このように企業はさまざまな危機の中で経営を行っていかなければならない。

ところで危機管理は問題が発生した時に、対処していくことだと誤解されているところがあるが、危機を招かないように努力するのが本当の危機管理である。苦労して得た企業の信用と利益を危機によって損なうことは絶対避けなければならない。企業が健全で持続的な成長を続けるためには、日頃から危機管理を経営の中心に置き、想定される自社のリスクに対し、従業員から経営者までがそれぞれの立場で対応していく普段の努力が大切である。このような企業態勢にあれば、万一危機が起きても、ダメージを最小限にとどめることができる。特に、トップの危機に対する意識の高さが不可欠であることを強調したい。